「北極星を毎晩熱心に見上げる者があった。ヴィネイターの三つ星も、タウリの心臓も、あの天の河さえ全て浮気だった。一晩中同じところにいた試しがなかった。だから彼は一途に愛するものを思う心を、あの星の常に変わらぬ光に擬えた。」

これは北の国の民族文献に記されたものだが、我が国の偏愛趣味は周知の通りだ。きっとこの者は西の国出身だろうと思う。  北極星と聞くと何やら大層な星のようだが、実は2等星のこの星は見つけるのが少々難しい。しかし間違いなく正北に位置するその孤高さと真摯さには心を惹かれるものがあるのだろう。全天の星が巡る様子を寂静と見守るその様子は聖者や殉教者に喩えて謳われることも多いようだった。

この星を見るにはやはり北の国がいいように思う。研究がてら北の山岳に越いていた。聳え立つ雪山に降り立ちた面の銀世界に足を踏み入れる。空は相対するように黒く、銀河を湛えていた。一等星が最も多い季節だ。競い合うように嫁然と輝いている。

冬の星々は、砕けた氷のようにも見えるから不思議だった。本当のところはこの地上にある何よりも熱く、巨大なものであるというのに。それはこの足下に広がる北の大地の、何層にも重なった氷雪の底から溶岩の轟きが聞こえるのとよく似ていた。  冷たく熱いもの。対極であり、紙一重だ。  アデュレの全天を焼き焦がす冷たさ。六連星の燃えるように鮮やかな青色。

見上げる凍えた息が額まで登り、乾いた瞳が熱を持つ。  他でもないこの冷気が、血や星の熱を際立たせているのだと思った。

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目を離せずいて随分と時間が経った。  複雑な色を練りながら明るくなる東の空が星々を覆い隠していく。やがて差した陽に、きらきらと反射するものがあった。  細氷だ。  無数の氷の結晶が幾重にも重なり、朝日を透すと星屑のように煌めいた。

深くふかく息を吸う。凍えた大気が喉を刺す。そうして肺いっぱいに吸い込んだこの星屑たちが体内で新星の爆発起こす想像する。  知らず指先で花火が弾けた。